海城中入試 国語問題の傾向と対策
海城中の国語 入試対策についての記事です。(ハイレベルの中学受験を目指す方に、問題の傾向と対策をお伝えするシリーズです。志望校である場合はもちろんのこと、志望校と似た他の学校の過去問を探し、解いていくことでも力がつきますので、ぜひ参考にしてください。)
海城中学校(海城中学校 東京都)
国語出題の特徴:他校との比較
海城中学校の国語は、一般入試の場合、日を変えて2回受験できるチャンスがありますが、1回目も2回目もレベルの差は全くなく、例年大問2題構成になります。
大問1が物語文、大問2が論説文です。
他校と異なる特徴としては、年度によって若干の違いはあれど、基本的には大問1も大問2も、
「小問が10~12問、うち1問が指定文字数で書く記述問題(50-100字程度の範囲)で、それ以外はほぼ選択肢問題」という構成になっている点です。
この選択肢問題の難易度が高く、必ず本文と忠実に照らし合わせ、読み解く力がないとひっかかってしまいます。量が多いこともあって辛抱強く正確に解く力が求められます。
出題の特徴:物語文
大人でも経験していないと難しい心情が描かれている問題が多い
たとえば2023年度によっては、下記のような問題が出題されます;
塾に行く時間になると、渚さんがどこかかたい表情をして、お弁当の包みを渡してくれた。
「…ありがとう、ございます」と言うと、渚さんはどこかぎこちない表情で笑ってくれた。
ここで読み取るべき大切な表現は、
「どこかかたい表情」
「どこかぎこちない表情」
です。
つまり、言い換えれば、
「本心から笑っていない」
わけで、その理由は何なのか、どういう気持ちがその裏にあるのか、を推察する必要があります。
そのための大事なキーポイントとなるのが、冒頭の説明書き部分です。
主人公の「想」は小学四年生。父と「本当の母さん」は二年前に離婚し、今は「新しいお母さん」の「渚さん」と、最近生まれた弟「海君」と父の四人で暮らしている。
渚さんは想にもやさしかったが、ある日育児の疲れからか、ドアの内側から扉が開かないようにするドアガードを外し忘れ、想を閉め出してしまった。
想はたまたま同じフロアに住む「おばあさん」に救われたが、その後も、毎日午後五時までドアガードは外されなくなってしまった。
さらっと読んでしまうと、血のつながっていない母親「渚さん」に秘められた感情をくみ取れません。
「渚さんは想にもやさしかった」
「ある日育児の疲れからか・・・」
などといった表現に惑わされ、「想」と同じように、
「渚さんをいい人」
と思いたいフィルターがかかってしまいます。
ところが、ここで最も気づくべき重要な部分はここです:
「その後も、毎日午後五時までドアガードは外されなくなってしまった。」
「渚さん」はたしかに一度目は、産後の睡眠不足や疲れから、「想」を意図せず締め出してしまったのかもしれません。
しかし、結果、おそらく「想」が特に泣きわめいたり、父に告げ口をしたりしなかったのでしょう、「渚さん」は、そのまだたった小学4年生の「想」の優しい性格につけこみ、次の日もうっかりを装って、「想」を締め出したのです。そこまで詳しくはもちろん書かれていませんが、毎日同じことを繰り返されていたことから、そうした背景が読み取れるのです。
五時というのがまたキーポイントです。
小学生なら、そのくらいまで時間であれば、友だちと遊ぶなり公園やショッピングモールなどで時間をつぶしても、周囲からさほど怪しまれません。
それが「想」以外の人から伝わって父親にばれることがないように、五時まできっちり締め出していたのです。
そして、それを「想」にだけわかる形で、意地の悪い仕打ちをしていたのです。
さてこの文章の中で最も大切な心情部分はここです。
小学4年生の心の優しい男の子「想」は、それでも、塾に行くためにお弁当を作ってくれたり、「想」のお礼に対して無視したりせず、ぎこちないまでもなんとか笑顔をとりつくろう義理の母親のことを悪く思いたくないとの思いの方が勝り、うすうす彼女が自分を邪魔に感じていることに気づいている気持ちにふたをしてしまうのです。
それが、「想」を心配した近所のおばあさんに声をかけられた時に放つ言葉に現れます。
「赤ちゃんが夜中に泣くから、母さんが寝られないんです。だから、昼間は二人を寝かしてあげたいから。僕、夕方までここにいます」
けれども、おそらく状況を見て全てを察したおばあさんと出会い、家に入れるまでの時間をそのおばあさんと幾度か過ごすうちに、押し殺していた自分の奥底にある本当の気持ちが少しずつ、自分では知らないうちに無意識から意識へと上ってきます。
そしてついに、ある夜、怖い夢を見たことをきっかけに完全に心の蓋が開き、母親に本当はたくさん会いたいんだと、幼い子のように父に泣きじゃくりながら訴えるのです。
夢から覚めて初めて、ようやく「想」が自分の本心を意識するのです。
このあたりの心情をしっかり汲み取れないと、難問
傍線部「『もっとたくさん、もっとたくさん会いたいんだよう…』/僕は子どもみたいに泣いた」とあるが、この時の「僕」は、いつもの「僕」とどのような点で違っているか。いつもの「僕」がどうであるかということにふれながら、80字以上、100字以内で説明しなさい。
で満点を取るのは難しくなります。
出題の特徴:論説文
極端に難解な論説文は出ない代わりに、選択肢問題が秀逸で、答えに迷うようなものが多くちりばめられています。
逆に言えば、機械的に、本文に忠実に答えの根拠となる部分を探すことを徹底すれば、得点できます。
海城中の国語対策
①本文に根拠を探すくせを徹底的につける
国語で得点できない最大の理由は、自分の受け取った感覚に近い表現をしている選択肢を選んでしまうことです。
本文には何と書いてあるか、何が書いていないかを必ず選択肢問題の文と照らし合わせるくせを徹底的につけます。
②早いうちから人間関係と心の機微がわかるような書物を多く読む
特に受験問題に採用される文章には、必ずヒントとなるような表現が出てきます。
それを読み取れるかどうかは経験によるところが大きいため、実際に体験できなくても、書物を多く読み、疑似体験を積むことが大切です。
もちろん、登場人物それぞれの立場に立ち、心情を想像する気持ちを持たなければ力はつきません。
③似た選択肢問題を出す他校の過去問でトレーニングする
海城中の過去問を解くことはもちろんのこと、選択肢問題で大変良い練習になるのが、青雲中などの問題です。
なぜその選択肢でなくてはならないのか、といった根拠を、明確に・かつスピーディーに本文中から見つけないと解けない論理的思考力が問われます。
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