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不登校・神経発達症

重めのASD症状を持つ男子と母が勝ち取った大学合格までの道のり

この記事は、成績不振・ASD・学習障害などで悩んでいる方や保護者の方に特に読んでいただきたい内容です。

絶対にあきらめなかった母親

多くは2~3年が限界であきらめてしまう

遡ること今から7年前。

当時小学5年生だったOくん(仮名)の諸症状で悩まれていたお母様が、食生活改善によって発達障害の症状が改善できるということをお伝えしていた私の元にご相談に来られました。
そこから懸命に食事改善を行いましたが、なかなかOくんの症状は改善しませんでした。

多くの方は、長くても2~3年やって結果が出ないと疲弊してしまい、あきらめてしまいます。

「これだけ一生懸命やっているのに、ほとんど何も変わらないのだから、無理だ。」と。

中には、数カ月で劇的に良い変化が出るケースもありますので、そうしたものと比べて判断してしまうのかもしれません。
あるいは、手もかかるしお金もかかる、体に良い食事や補足で用いるサプリメントを摂取し続けることが、いつまで続くのかといった不安も大きいものだと思います。

このお母様は絶対にあきらめませんでした。

もちろん、ASDの症状が重めだったため、本当に様々なご苦労をされていました。
コミュニケーションがうまく取れない・勉強についていけない・学校でお友だちからいじめられる・遠い病院への通院等・・・

勉強はつきっきりでお母様が見ていましたし、何かあるために奔走されていましたから、他にもお子さんがいらっしゃった中でさぞ大変だったことと思います。

ですが、節目節目でご相談下さり、私のアドバイスにも真摯に耳を傾けて下さいました。

これもとても重要なポイントでした。
アドバイスをしても、様々なご事情でできないこともあれば、そこは良いので勉強をとにかく見てほしい、と受け入れて下さらないケースもあります。
しかしながら勉強の成果を出すためには、体を整えていくことが必須で、揃わないと難しいのです。

中2から高3まで足掛け5年続けた国語塾

会話が成立しない状態からスタート

彼が中学2年の時に、モニターとして国語塾の受講をスタートさせたことが始まりでした。

高校1年生頃までは、

・サイズや金額といった単位の感覚がわからない
・両親が普段、何をしているのか想像がつかない
・会話のキャッチボールができない
・途中で意識が飛ぶ

といったことがなかなか改善されませんでした。

たとえば、単位については、
「携帯電話1つの値段はいくらくらいかわかりますか?」といった質問に対して、
「はい、100万円です。」といったり、

「靴のサイズはどのくらいですか?」といった質問に対して、
「38㎝くらいです。」といった具合です。
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両親についての質問では、
「お父さんはどのような仕事をしていますか?」の質問に対して、
「お父さんは、会社で、国語・算数・理科・社会をやっています。」と答えたり、

「お母さんは、Oくんが学校に行っている間、何をしていますか?」との質問に、
「わかりません。」
と答え、普段、食事の支度をしてくれたり、洗濯をしてくれたりするのは、お母さんではないのですか?と聞いてみても、
「知りません。」
との回答が返ってきます。
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見えていないものは想像できないという脳の特質からきているわけですが、母親としてはやはりとてもガッカリしますよね・・・。
ちなみに、ASDの当事者の方がどのように世界を見ているのか、の参考になる本を文末に掲載しておきますね(※)。数年前のものですが、とてもわかりやすいと思います。

そのため、まずは彼のわからないことを明確化すること、言葉のキャッチボールはどのようにするのか、といったことを中心に授業をしていきました。

質問しつつ親がいないとどうなるのか1つ1つ説明

調べてもらった身の回りの物のだいたいの値段を本人に書いてもらう

テスト前になると頻繁に居眠り・記憶が飛ぶ

学校の定期考査前になると、試験勉強をしなくてはならない過労とストレスからか、必ずと言っていいほど、意識が途切れてしまうといった事態が発生するようになりました。
Oくんが高校1年生の夏頃から2年生にかけてが一番症状としては顕著だったように記憶しています。

会話をしていても、突然返事が無くなり、しばらく眠ってしまったり、返ってきても、全く関連性のないことだったり、同じことをぐるぐる繰り返してしゃべってしまう、といった様子でした。
また、授業中、お腹が痛いといってトイレにこもることもしばしばでした。

実はこの頃がお母様にとってもご心労がピークに差し掛かっている時期で、毎日毎日何年もつきっきりでOくんの勉強や日常生活を見てきたお母様の目には、

「イヤなことから本能的に逃げている結果なのではないか?」

というように映ってしまっていました。

しかしながら、”どうみても脳の回路がショートし、目があきらかにうつろで、げっそりとしている” 彼の様子を見るにつけ、頑張らせたところで頑張れない脳と体の状態になっていることは明らかでした。

この頃になると、私も分子栄養学についての学びを随分と深めていたこともあり、腸内環境とASDとの深い関連についても理解していたので、ストレスによって下痢を引き起こすことで、腸内環境が大きく変化し、よりASDの傾向が強まること・栄養がうまく体に行き渡っていない状態が起こっていることが想像できました。

そこで、その旨をお母様にお伝えし、病院での検査の結果、
「副腎疲労」
を起こしていることがわかったのです。

副腎疲労の回復とともにみるみるASDの症状も改善

分子栄養学に則った、副腎疲労を回復するための食事やサプリメントというのも非常に大切なのですが、Oくんの場合は、それを吸収できる状態にすべく、まずは腸内環境を整えることが先決でした。
そのため、通われていた病院で処方される漢方薬を服薬することを優先していただくようお伝えしました。

サプリメントと漢方薬は同時に服用しない方が良いと言われています。最低でも30分以上は間隔を空けるようにと言われています。

2カ月後くらいから、目に見えて症状が良くなってきました。
授業中、意識が飛ぶことは全くなくなり、かなりスムーズに会話ができるようになりました。

二人の教師で担当したことも転機に

もともとは私が一人でマンツーマンで指導してきたのですが、別の角度からの刺激もあった方が良いのではないかと、子ども研に所属している向江先生に依頼し、それぞれ週1回ずつ、計週2回、授業を受けてもらうようにしました。
(注:向江先生は、講師育成用の講師のため、基本的には授業依頼はできません。)

お母様は当初、かなり不安に思っていたご様子でしたが、それでもこちらの提案を受け入れて下さいました。

向江先生には、グラフや表の読み方というのをご担当いただきましたが、1つの課題に数カ月かけてでも、しっかり定着するまで何度でも同じ質問と説明を繰り返しながら、根気よく教えて下さいました。

国語塾

向江先生の報告書例

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私の授業では、主に「擬態語を使った作文」というのをメインにやっていきました。
わくわくする、そわそわする、ドキドキするといった言葉を使って、短い作文をするというものです。これをやっていくことで、彼独特の理解と一般的な感覚との埋め合わせが出来ました。

ちょうど、外国の言葉を話す人に日本語独特の感覚を教えていく、というようなイメージでしょうか。
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国語塾

小宮授業の報告書例

このやり方が、ちょうど副腎疲労から回復し、また成長がひと段落してくる高校2年生の終盤に差し掛かったOくんの体の状態とうまくマッチし、とても功を奏したように思います。

高3で通信制高校へ転入

Oくんは私立の中高一貫校に通っていたため、進級や進学するには、学校のテスト等で一定条件を満たす必要がありました。

Oくんは、ASDの特性もあって何があっても学校に行くことを大切に考えており、滅多に休まず遅刻もせず頑張ってきていました。
中学時代はいじめられていましたが、ようやく友だちもでき、学校を転校することにはとても抵抗があったそうです。

しかしながら、学校の進学条件を満たすために払わなくてはならない本人やご家族の犠牲(お母様がつきっきりで勉強を見ないとならないことが、様々な形でご家族に影響を与えていました)を天秤にかけて考え、ご家族で何度も何度も話し合い、さんざん悩まれた結果、高3の進級時に通信制高校へ転入することにしたのです。

結果、そこからさらにOくんの症状改善は加速しました。
重くのしかかっていたプレッシャーが取り除かれ、Oくんもご家族も、皆、心身が開放されたことが非常に大きかったのだと思います。

ついに手に入れた大学入試合格

そしてつい先日。
ある大学の総合選抜入試に合格したとのお知らせを受けました。
(名の通ったすばらしい大学です)

あの、コミュニケーションが全くままらなかった状態から、ここまで来るとは、当時は全く想像できませんでした。
それでも、お母様、Oくん、そして我々講師陣、誰一人としてダメだと思わず、皆、あきらめないでやり続けてきたからこそ得られた成果だと思いました。

あきらめなければ、ここまで変われるのだ

ということを深く感じた出来事でした。
感無量でした。

子育ては20歳までの長期プロジェクト

結果が見えてくるのは体の成長がある程度止まる17~18頃

たとえば、小学5~6年生の頃から国語塾で思考力や表現力を学び初め、同時に食生活改善に取り組んでいただいたとして、それが本当に実を結ぶのは、高校2年生頃、というスパンで考えていただけると良いと思います。

もちろん個人差はありますが、思春期の子どもたちは、猛烈な速さで日々成長しているため、どんなに栄養を足しても足りないくらいなのです。

しかしながら、正しい知識がないと、
「お腹を満たす食事」はしていても、「脳と体を動かすための栄養摂取」は足りていない状態が容易に起こります。
とても簡単にいえば、体に不要なものを無駄に摂取しているので、消化や解毒にエネルギーは使うものの、さらに深刻な栄養不足を招くという悪循環に陥っているのです。

その状態で勉強だけやっても、成果が出ません。

逆に言えば、しっかり思考できる脳を作るために必要な体を作っていけば、だらだらと長い時間勉強をしなくても、理解できるようになってきます。

視点を”今” ではなく、5年先、10年先へ

激しい成長に追いつくように、必要十分な栄養を与えながら従来の弱った細胞が生まれ変わるための時間が必要なのですが、
特に発達に関する様々な諸症状が出ているお子さんの場合は、腸が弱いことが圧倒的に多く、もっと時間がかかる
こともあります。

しかしながら、途中でやめてしまったり、最初からあきらめてしまうと、ただただ体に負担がかかっているだけになってしまうため、数年先の未来につながっていきません。
それが甚大な「失われた数年間」になってしまいます。

視点を遠く5年後、10年後に置き、ぜひ希望と信念を持って進んで行っていただけたらと思います。
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※先述のご参考書籍はこちら


所属講師


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食育講座(オンデマンド)

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