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子どもの発達

発達障害の症状改善と腸内細菌

前回の記事:発達障害の症状は改善できるのか?

前回の記事で、発達障害というのは、“ある症状”であって生まれつきの障害ではないケースが非常に多い、ということに少し触れました。
今回の記事から、現在考えられている様々な根本原因について、少しずつお伝えしていきたいと思います。

腸内細菌と発達障害症状は深く関係しているらしい

腸内細菌が出すものが、私たちの体を動かしている?

もしかしたら、中には既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、近年、脳腸相関という言葉も普及してきた通り、腸内細菌は、これまで考えられていた以上に、様々な形で、私たちの心身の健康と深く関わっていることが近年次々と明らかになってきました。

簡単に説明すると、腸内細菌は人間が食べたものを“エサ”にして生きています。その結果、腸内細菌にとってはいらなくなったものを出すわけですが、その出したものが、人間にとってはとても大切な「物質」であるということなのですね。

このことについて、よく知られているのはビフィズス菌でしょう。
これは乳酸という、人間にとってエネルギーになる物質を出してくれます。

ところが近年、研究が進み、もっと深いつながりがあることもわかってきました。
たとえば、炎症を抑えるために働く細胞が、腸内細菌の出した物質を取り込むことで分化を始める、といったようなことです。つまり、ヒトの細胞を働かせるためのスイッチにもなっているのです。とても長い年月をかけて、人間と腸内細菌との間で、持ちつ持たれつの関係がうまく出来がったのですね。

腸内細菌叢と人間の能力や性格、体質、ストレス状態などまで関係

なんとさらに、腸内細菌は、私たちの性格や心の状態、体質や運動能力などをも左右するらしいことがわかってきました。

マウスを使った実験で、優秀なアスリートの腸内細菌をマウスの腸内に移植すると、マウスのランニング能力が向上する、といったことや、太ったヒトの腸内細菌を取り出し、マウスの腸へ移植すると、そのマウスは体脂肪が蓄積しやすくなって太り、痩せたヒトの腸内細菌をマウスの腸に移植した場合、マウスは太らずに体形が維持されたという結果なども報告されているのです。

これ以外にも、様々な実験により、アレルギーなどに関わる免疫力や、眠れない・意欲がないといったストレス状態、子供の脳の発達や行動などにまで影響していることが近年明らかになりつつあります。腸内細菌との関係がここまで深いことに、とても驚くのではないでしょうか。

子どもの脳の発達や行動と腸内細菌

子どもの脳の発達や行動に関係しているということについて、もう少しお話したいと思います。

これまでは、生まれつき・遺伝だと考えられていた性格や能力、体質などが、腸内細菌と関係が深いらしいということがわかってくるとともに、発達障害の症状についてもまた、腸内細菌との関わりが深そうだということもわかってきました。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の症状と腸内細菌叢

たとえば、ある特定の細菌が出す物質(プロピオン酸)が過剰にあると、

「物事を忘れることができなくなる」
「その場でぐるぐる回る(常同行動の一種)」
「単一の物体に固執する」
「突発的に走る」
「相手を無視する」

などの行動がみられたという、マウス実験による研究結果が報告されています。

逆に、ASD(自閉症スペクトラム障害)の症状を持つ人に腸内微生物の移植をしたところ、自閉症の症状が改善したという事例も報告されています。

これらの実験結果から、発達障害の症状が、必ずしも生まれつきの遺伝的な欠損があるからではなく、腸内細菌叢との関わりからきている可能性があること、研究が進むことで、症状が大きく改善する“可能性がある”ということがわかりますね。

もちろん、「症状」というのは、あくまでも何かの結果として表れているものです。その「原因」は様々ですから、全てのケースにこれが当てはまるわけではないでしょう。

しかしながら、そういう“可能性がある”ということを知っているだけでも、随分と気持ちは変わってくるのではないでしょうか。
(補足:ちなみに、どのような細菌のグループがどのような割合で存在しているかは、個人個人で大きく異なり、たとえ一緒に暮らす家族であっても、異なることがわかっています。)

自閉症やうつ等の症状は、赤ちゃん時代の腸内環境も大きい?

腸内細菌叢の原型は3歳までにつくられるといわれています。一旦、バランスが出来上がってしまうと、人間との共生関係が出来上がり、なかなか新しい細菌が根付かないといったこともいわれています。

赤ちゃんは生まれてくるときに、母親の産道に棲息する常在細菌叢をもらい受けるほか、授乳や、自分の指をしゃぶるなどといった行為を通し、自分の腸内に細菌叢を形成していきます。
しかし最近は、非常に清潔な環境でのお産や育児が行われることや、抗生物質の多用によって、良い腸内細菌なども含め多くが死滅したりすることで、赤ちゃん時代に形成される腸内細菌叢が昔とは大きく変化してきています。

こうした変化が、昨今、発達障害やうつなどの症状を抱える人の割合が、急増していることの1つの要因であるといえるでしょう。

腸内環境を改善することで症状は良くなるのか?

腸内環境改善で子どもたちの発達障害症状が改善する事例が多数

私がこれまで対応してきた中で、食事や生活習慣などを見直し、腸内環境を改善することで、様々な症状が改善した事例を多数見てきました。

たとえば、小学校の低学年では支援級に行っていたが、理解力が上がったり、落ち着きを取り戻したりし、高学年から普通級に行けるようになったとか、2年間も不登校だったのに、元気に学校に行けるようになった、成績が上がった、落ち着きを見せるようになったなどです。

中でも最も印象的だったのは、ある自閉症の症状を持った男子生徒です。

改善前は、ある特定のこと(ある時いじめれた記憶)だけに固執し、全く違うどんな話をしても、その時の感情へすぐに戻ってしまい、

「僕はあの時、怒ったんです!腹が立ったんです!」

と、会話のキャッチボールが全くできないことが多々ありました。

想像力や記憶力が働かず、たった15分の授業ですら進まなかったこともありました。

ところが、時間をかけて食生活の改善をしていった結果、見違えるほど様々な会話がスムーズにできるようになり、記憶力も向上したのです。

正直、最初の彼の状態からここまで状態が良くなるとは想像できませんでした。

腸内環境を改善することで発達障害の症状は改善する可能性はある

こうした経験から、私は、発達障害というのはあくまでも「症状」であって、治らない障害だと最初から決めつけるのは早い、ということをお伝えしたいのです。

もちろん、様々な要因が絡み合ってその症状が出ていることもありますから、全員がこの方法で改善しますよ、と言っているわけではありません。中には本当に薬を必要とする方もいらっしゃることでしょう。どうかそこは誤解のないように理解していただければと思います。

今回は、いくつかある手段のうち、腸内環境を改善することで、症状は良くなる可能性がある、というお話でした。

次回は、

「腸内環境を改善するためにできることは?」

をお送りする予定です。

参考文献
日本内科学会誌第104巻第4号 腸内細菌叢と肥満症
Nature Medicine 24 June 2019
生命誌ジャーナル 腸内細菌と宿主の肥満をつなぐ受容体 木村郁夫(東京農工大学)
Mucosal Immunology 24 January 2018
朝日新聞  「腸存共栄」の未来
モダンメディア63巻2号2017 腸内細菌叢 腸内細菌による免疫制御
ライフサイエンス新着論文レビュー 腸内細菌の産生する酪酸による制御性T細胞の分化の誘導
WIRED Health 2015
Nature asia 2019.2.5 腸内微生物とメンタルヘルスとの関係が判明
化学と生物 56巻1号2018 性ホルモンが操る腸内細菌叢が代謝疾患を制御する腸内細菌叢を標的としたアンドロゲンの作用
Science 2011年1月21日 常在クロストリジウム属菌による大腸制御性T細胞誘導
腸内細菌と健康 醸協 2013 第108巻第10号
Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 2
自閉症の症状と腸内細菌叢に対するマイクロバイオータトランスファー療法の長期的な利点
https://www.nature.com/articles/s41598-019-42183-0

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