【発達と生化学】子どもの牛乳の飲みすぎは大丈夫?
発達・学習・腸内環境から考える牛乳との付き合い方
子どもの発達や学習について考える時、食生活は切り離すことができません。
私たちの体は、食べたものから作られています。
そして、食べたものは単なる「栄養素」ではなく、体内でさまざまな化学反応を起こし、細胞や脳の働きにも影響しています。
今回は、その中でもご相談の多い「牛乳・乳製品」について、子どもの発達、学習、腸内環境という視点から考えていきます。
牛乳を控えたことで落ち着きが見られたケース
国語塾に通ってくださっていた生徒さんのお母様に、食生活についてのアドバイスをしたところ、こんなお声が寄せられました。
息子が大量に牛乳を飲むのですが(1日1.5リットルぐらい)、気に入らないことがあると直ぐに怒ったりします。
それがこの1週間ほど、1日コップ1~2杯程度を飲むようになったら、とても落ち着くようになりました。上の娘とも、(すぐ怒ったりしていたのは)牛乳のせいだったのではと話しています。
ㅤㅤ
息子本人も、
「(たしかに)牛乳を沢山飲むようになった小学校3年生から言う事を聞かなくなったかも」
と言っています。
ㅤㅤ
(その後、ご子息様だけでなくお嬢様も検査で不耐がわかり、二人とも牛乳は控えるようになったとのことです。尚、不耐かどうかは、毛髪検査(※文末)で調べることができます。)
牛乳・乳製品を摂取することで体に起こること
栄養面だけでは見えない、生化学から見た牛乳
「牛乳にはタンパク質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンがバランスよく含まれています」
ㅤㅤ
このように私たちは教わってきました。そして、実際に含まれている栄養素に目を向ければ、確かにそうだと思えます。
しかし、体の中で起こっていることを考える時には、単純に「何が含まれているか」だけではなく、
「体内に入った後、分子レベルでどのような化学変化が起こるのか」
という視点も必要になります。
食べ物は、口から入った瞬間に終わりではありません。
消化、吸収、代謝という過程を経て、細胞やホルモン、神経伝達など、体のさまざまな働きに関わっていきます。
牛乳や乳製品についても、栄養成分だけではなく、体内でどのように利用されるのかという視点から考えることが大切です。

ㅤㅤ
①リンの過剰摂取による骨からのカルシウム溶出
牛乳はカルシウム摂取源として有名になっていますが、牛乳のカルシウムは、「牛の赤ちゃんが飲んで吸収されるようなミネラルバランス」になっています。
ㅤㅤ
そのためリンという物質が多く、人間がこれを飲むと必要以上のリンが入ってきたことにより、体内の骨や歯からカルシウムを溶かしてそのリンと結びつけるといった働きが行われることがわかっています。
リンはほぼすべての食品に含まれており、加工食品では添加物として使用されることもあります。
そのため、現代の食生活ではリンの摂取量が多くなりやすい傾向があります。
体内では、カルシウムとリンは密接に関係して調整されています。
骨はカルシウムとリンから構成されているため、体内のミネラルバランスが崩れると、ホルモンによる調整が行われます。
特に、リンの摂取量が多い状態では、体は血液中のカルシウム濃度を一定に保とうとするため、骨からカルシウムが動員される仕組みがあります。
学校給食で毎日牛乳を飲み、さらに乳製品や加工食品を多く摂取する場合には、こうしたミネラルバランスにも目を向ける必要があります。
骨はリンとカルシウムが結合したものであり、体内のリンが過剰になるとPTHというホルモンが分泌されることで骨から血中へのカルシウム溶出を増やしてしまう。
腎臓とミネラル代謝ホルモン
コンビニエンスストア弁当に含まれるリンの計算値と実測値の比較
②カルシウムだけではなく、マグネシウムとのバランスを見る
現代の食生活では、カルシウムばかりが注目されがちですが、体の中では一つの栄養素だけで働くものはほとんどありません。
特にカルシウムとマグネシウムは、お互いにバランスを取りながら働く重要なミネラルです。
例えば、血管ではカルシウムイオンが入ることで収縮方向に働く一方、マグネシウムはその働きを調整し、血管を緩める方向に作用します。
細胞レベルでも、カルシウムによって起こるさまざまな反応をマグネシウムが調整しています。
つまり、カルシウムだけを多く摂取すればよいという単純なものではなく、体内のミネラルバランス全体を見ることが大切なのです。
現代の食生活では、精製された食品の摂取、加工食品の増加、土壌中のミネラル量の変化などにより、マグネシウム不足が起こりやすい環境になっています。
そこに、カルシウムを多く含む食品を過剰に摂取することで、相対的なマグネシウム不足につながる可能性があります。
マグネシウム不足が神経発達症(発達障害)や学習能力の低下を招く
マグネシウムは、神経の働きやエネルギー代謝にも関わる重要なミネラルです。
不足すると、
・疲れやすい
・集中しにくい
・イライラしやすい
・学習時のパフォーマンスが低下する
など、日常生活にも影響する可能性があります。
発達や学習について考える時、「勉強量」だけを見るのではなく、脳が十分に働ける体の状態になっているか、という視点も必要です。
マグネシウムはエネルギーATPの授受に不可欠なミネラルであるため、不足すると全てのエネルギーを使う反応が停止する。300種もの酵素反応に関わっているといわれている。
また、骨形成に関与する酵素(アルカリフォスファターゼ)の補因子としても働く、骨が成長する過程においてマグネシウムがカルシウムを呼び寄せるような働きをするなど、様々な形で重要な役割を持っている。
マグネシウム欠乏におけるカルシウム過剰の栄養生理学的・病理組織学的検索
③乳糖不耐症による腸の不調を招く
牛乳に含まれる乳糖は、ラクターゼという消化酵素によって分解されます。
しかし、日本人を含む東アジア人では、離乳後にラクターゼ活性が低下する人が多く、乳糖を十分に分解できない場合があります。
その結果、消化されなかった乳糖が腸内に残ることで、
・お腹が張る
・ガスが出る
・腹痛
・下痢
などの症状につながることがあります。
引用元:MSDマニュアル家庭版 乳糖不耐症
ちなみに、乳糖が下痢を起こすからよくない、といった短絡的なことではなく、
下痢が繰り返し引き起こされることにより腸内細菌叢のバランスが崩れ、それによってもたらされる弊害が見過ごせないものである
ㅤことのほうがより深刻です。
ㅤㅤ
④牛乳に含まれるカゼインが不耐を起こす
牛乳に含まれる主要なたんぱく質の一つがカゼインです。
たんぱく質は本来、消化酵素によって分解され、体内で利用されます。
しかし、体質によってはカゼインの消化や処理が負担になる場合があります。
消化が十分に行われない状態が続くと、腸粘膜への刺激となり、腸のバリア機能に影響する可能性が指摘されています。
腸のバリア機能が低下し、本来なら通過しにくい物質が体内に入りやすくなる状態は、
「リーキーガット(腸管透過性亢進)」
とも呼ばれています。
これを「リーキーガット症候群」と呼びます。
ㅤㅤ
リーキーガット症候群が様々な心疾患を招く
腸壁から体内に体に有害物質が入ってしまうことで、頭痛・肩こり・生理痛などをはじめとする痛みや、アトピー、皮膚疾患などといった炎症に関わる様々な症状を引き起こすと考えられています。
また、ウツや強迫性障害などといった心疾患とも関係があると言われています。

ㅤㅤ
「もっと欲しい」が続く場合に考えたいこと
牛乳、アイスクリーム、チーズ、クリーム系のお菓子など、乳製品を強く欲しがる子どももいます。
もちろん単なる好みの場合もあります。
しかし、中には特定の食品に含まれる成分を繰り返し求める状態になっているケースもあります。
牛乳に含まれるカゼインが分解される過程で生じるカゾモルフィンについては、オピオイド様作用との関連が研究されています。
まだ研究段階の部分もありますが、食品と脳機能との関係については、今後さらに解明が進んでいく分野です。
これは牛乳だけではなく、小麦製品に含まれるグルテンについても同様に研究されています。
ㅤㅤ
子どもの発達デザイン研究所の見解
牛乳や乳製品について調べると、「健康に良い」という情報もあれば、「控えたほうがよい」という情報もあり、迷われる方も多いと思います。
大切なのは、食品を一律に良い・悪いで判断することではありません。
子どもの体は一人ひとり違います。同じ食品でも、
・問題なく食べられる子
・量によって影響が出る子
・体質的に合わない子
がいます。
「牛乳を飲んでいるから問題」
「牛乳をやめればすべて解決」
という考え方ではなく、その子にとって、その食品が合っているのかを丁寧に見ていくことが大切だと考えています。
以下のような様子がある場合には、一度食生活全体を見直してみる価値があります。
・牛乳を大量に飲み続ける
・乳製品をやめられないほど欲しがる
・お腹の不調がある
・集中力や気分の波が大きい
・食生活を整えても不調が続く
不明な場合は、毛髪検査をしてみるのもおすすめです。