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家庭でできる感染防止対策Ⅰー除菌について

子どもの発達デザイン研究所代表 小宮です。
30年前、まだ日本ではほとんど手つかずだった「院内感染防止」の考え方やシステム・建築設計などを、アメリカやドイツなどに習い、いち早く日本の病院、主に大学病院の手術部に取り入れていく仕事に携わっていました。
この経験を元に、家庭でできる感染防止対策について、何回かに分けてお伝えしたいと思います。
(情報は日々刷新されていますので、異なる部分がございましたらご容赦ください。)

除菌って何だか知っていますか?

除菌という言葉があふれかえるようになった昨今ですが、何となく、薬剤を用いて消毒することと、同じイメージになってはいませんか。

除菌、というのは、その字の通り「菌を取り除くこと」をいいます。
つまり、結果的に取り除けていようがいまいが、
「菌を取り除く行為」
を指しているのですね。清潔のレベルの度合いではないのです。

ちなみに殺菌も同じで、菌を殺す行為を指し、清潔レベルの度合いを表しているわけではありません。
除菌や殺菌をした結果、清潔の度合いが消毒レベルになった、というような感じといったらわかりますでしょうか。

清潔のレベルとは?

清潔のレベルの段階はというと、実は3つの段階しかありません。

・すべての菌や微生物がゼロの状態である滅菌レベル
・人体にとって無害なレベルにまで菌数または感染力が落ちている消毒レベル
(一部の菌は死んではいないけど不活化されている状態)
・汚れが除去されている洗浄レベル

なのです。

これ以外は基本的に、「汚染」されているものとして扱います。

どうしてこういうくくりになっているかというと、たとえば非常に感染力の強いウィルスや菌などは、ほんの少量でも、ちょっとした傷口などから、本来無菌であるはずの人体の組織に入り込むと、血流に乗って全身に影響を及ぼすことなどもあるからです。

医療従事者が、注射針の先をうっかり自分の手などに指してしまって、肝炎やHIVに感染してしまう、といった例がわかりやすいかもしれません。そのため、手術に使用する道具や注射針など、無菌の体内組織に使うものは、全ての菌や微生物がゼロである状態、つまり滅菌されている必要があるからなのです。

こうした強い感染力を持つものは、案外熱に弱いので、55℃くらいから感染力を失い、80℃以上のお湯で10分程度煮沸消毒処理をすれば、たいがいのものは消毒レベルにまで無毒化できます。
実際、手術用の器材であっても、消毒する際には、巨大な食器洗浄機のようなもので洗っています。
(その後、滅菌工程へと移されて行きます。)

ただ、温度が高すぎると、タンパク質が凝固してしまい、その中に汚れや微生物などが残ってしまうことがあるため、消毒の前に、可能な限り汚れを落としておく洗浄処理が必要なわけです。

なので、普通に暮らしていれば、たいがいはきれいに洗って、心配なものについては熱湯で消毒すれば十分とも言えます。食べ物なら、しっかり火を通すことですね。

除菌ができれば除菌剤や消毒剤は不要

今、巷にあふれているのが、消毒効果のある除菌剤です。

菌というのは、「細胞」を持っていて、増殖します。
殺菌効果がある、ということは、細胞にダメージを与える、ということなのです。
つまり、細菌だけではなく、人の細胞にもダメージを大なり小なり与える、ということでもあるのですね。

菌をある程度減らす・取り除くことができれば、別に消毒薬を用いなくても実は良いのです。

むしろ、あまりに清潔・清潔とやみくもに様々な菌を殺菌してしまうほうが、人間と共存して持ちつ持たれつの関係を築いている細菌たちのバランスを大きく崩し、これら細菌による免疫を助けてくれる働きが弱まるため、アレルギー症状がひどくなったり、感染力が落ちたりする大きい原因ともなっているのです。
(細菌と腸内環境については、2020年度オンデマンドセミナーにて学べます)

ちなみにカナダの実験では、週1回の家庭用消毒剤の使用で、子どもの腸内細菌が変化し、肥満が増加したとのデータも報告されています(肥満と腸内細菌も実は深く関係しています)。
出典:家庭用消毒剤、乳児の腸内微生物叢への出生後の暴露、およびその後の子供の過体重のリスク

そこで、むやみに消毒剤を用いなくてもできる掃除のポイント、についてお伝えしたいと思います。

汚染を広げないお掃除方法

掃除のポイント

1. 往復させない

掃除するときに、ぞうきんや布巾、ブラシなどで、同じ面のままあちこち拭いたり、ゴシゴシしたりしていないでしょうか?
これはNGです。
なぜなら、掃除道具についた菌を、さらに擦り付けてしまっているからです。

新しい清潔な面で、一方向に
床や壁、テーブルなどを拭くときも同じです。たとえば左から右にスーッと拭いて、右端にきたら、新しいきれいな面に変え、同じ面に重ならないようにして、今拭いた部分のすぐ上のラインを、今度は右から左へと拭いていきます。

2. 上から下へ

ほこりや液体は上から下に落ちてきます。そのため、下から掃除していくと、せっかくきれいにした面も、すぐ汚染されていってしまうのです。必ず上から下に向けて掃除します。縦方向も1と同じく、掃除した面で往復させないようにします。

ちなみに、ドラマなどでもよく見かける手術のシーンで、手袋をはめた手を上に挙げているのも、同じ理由です。
せっかく清潔にした手を下にしてしまうと、清潔にしきれなかった袖口や腕から、落ちてくる汚染物質がついてしまうからなのです。

3. 傷をつけない

人間の目には見えないほど小さな菌類は、細かい傷や、ネジまわり、凸凹のある構造の入り組んだ部分など、つるつるしていないところ=掃除できないようなところで増殖します。汚れを落とそうと必死になって、ブラシや研磨剤などでごしごしすればするほど、菌のお家を作ってあげているようなものなのです。

除菌するタイミング

掃除直後にほこりが舞い上がるやり方やタイミングでは、あまり意味がありません。
食事前にテーブルやキッチンなどをきれいにするのは別として、食事後・出かける前・寝る前といった各タイミングが良いと思います。

さあ掃除をするぞ、と構えると面倒なので、ついでにちょこちょこやるのがいいですね。

トイレのついでにトイレまわり、洗顔や手洗いのついでに洗面まわり、食後にテーブルの上だけでなく、椅子や床下を雑巾がけ、食事の後片付け時に、冷蔵庫の取っ手やごみ箱を拭くなど。

トイレだったらトイレットペーパー、キッチンだったらキッチンペーパー、床などは使い捨ての不織布などを使い、水拭きです。

除菌する上で気を付けたい場所

除菌する上で気を付けたい場所は、基本的に、頻繁に人が手で触るところ、あるいはほこりがたまりやすいところです。

リモコンやPC、携帯、ドアの取っ手、おもちゃなどについては、きっと皆さまもご存知だと思いますが、これ以外にも、

・クローゼット、キッチン戸棚、引き出しなどドア以外の建具や家具類の取っ手
・冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器など家電類のスイッチや取っ手
・蛇口の取っ手、パーツの取り合わせ部分、シャワー部分の内部(黒カビなどが繁殖している可能性)
・巾木(はばき)・・・壁と床との境にあるもの
・入り隅のところ(内側に、角と角が合わさっている隅っこのこと)
・楽器
・靴ベラ
・時計

などがあります。また、無意識的に、触りがちな、壁や棚などがあればその部分もそうですね。

巾木や枠まわり、入隅になっているところは注意

使うなら電解水を

除菌剤や消毒液をどうしても使用しないと心配、といった場合、市販の化学薬品を含むものではなく、電解水をおすすめします。

電解水というのは、要するに水をイオン化させて、アルカリ性か酸性か、どちらかに偏らせたものです。
傾き度合いが高いほど、殺菌作用や洗浄効果があります。ちなみに殺菌作用が高いのは、酸性の電解水で、タンパク質などの汚れを分解する洗浄効果が高いのはアルカリ性の電解水です。

ただ、水だから安心かというと、決してそういうことではありません。傾きの度合いが高いものほど、人体にとっても危険であることには変わりはありません。
電解水にも色々種類がありますが、弱酸性のもので、殺菌効果が高い(人体の肌にとってはやさしいが、細菌に対しては細胞を壊す力を持っている)とされているものをまずはおすすめします。

※:ウィルスは菌とは異なり、細胞を持ちません。人間が感染するウィルスは、人間の細胞に入り込んで、いわば細胞を乗っ取り、増殖していきます。
※:除菌、と書いていますが、同じ作法でウィルス除去にも概ね役立ちます。

続き:家庭でできる感染防止対策Ⅱー見落としがちな汚染源

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