小論文コース修了課題コンテスト
優秀作品掲載
下記小論文は、小論文コースを一年間受講した後、コース修了課題で優秀賞を受賞した作品です。
採点基準:授業で教えた下記条件をどれだけ踏まえているか
・書きだしは全員同じく「AI の進化と人間との関係から、これからの未来について考えてみたいと思う。」
・メリット、デメリットそれぞれ、3つずつ列挙した上で考察する
・自分の結論を明確にする
・それによりどうなる、その結果どうなるといった具体化を意識し思考する
・根拠を列挙する順番とリズムに注意
・文字数や、原稿用紙にあるような改行・字下げ等の指定はなし
審査員:倉澤、向江、長谷川、西山(いずれも所属講師)
2022年度課題:AI化と人間との共存・これからの未来について
RA(中2男子)
AI の進化と人間との関係から、これからの未来について考えてみたいと思う。
最初に AI 化の促進は社会にどういったメリットをもたらすか考えてみる。
まずは AI に様々なことを任せられることだ。
AI にでもできる作業を AI に任せ、アイデアを出すことなどの人間にしかできないことにだけ人間が取り組むことにより、人間の作業時間を減らすことができ、その分だけ人間の作業をしていない時間を増やせる。
その結果、人間の生活に大きな余裕を生み出すことができるだろう。
次に AI が無駄なところを発見することだ。AI に不必要な経費、人員、備品を探させ、発見されたものを、必要な所に必要な分だけ再分配させる。
その結果、事業のさらなる効率化につなげることができるだろう。
さらに AI に様々なことを予測させられることだ。AI に事故の発生や今後のトレンドや景気、事故、誤作動の発生条件、ハッキングの手口とその対策などを事前に予測させ、その結果を AI が人に知らせることにより、会社利益の最大化や、事故の防止、安全性の向上、自己修復による誤作動の防止などにつなげることができるはずだ。その結果、会社の発展や安全性の向上、人間生活の維持などに大きな貢献をすることができるだろう。
今度は、AI 化の促進は社会にどういったデメリットをもたらすか考えてみる。
まずは AI が人間の仕事を奪ってしまうことだ。
AI にでもできる作業を AI に任せ、今までその作業を行っていた者が解雇されるといったことにより、失業者が大量に発生してしまうに違いない。
その結果、無職の 人間が溢れ、治安の悪化や生活保護者の増加などに繋がるだろう。
次に AI が何らかの原因により誤作動を起こしてしまうことだ。
AI に依存した社会において AI の誤作動が発生すると、工場のラインがストップし、商品が作られなくなるなどの事象が発生するかもしれない。
その結果、生活必需品が店頭からなくなるなどして、人間の生活に重大な影響を 及ぼすだろう。
さらにインターネットを経由して、システムが攻撃されてしまうことだ。
AI 化の進展に伴い、インターネットへ社会的インフラが規模の大小を問わず接続することで、それらがインターネットを経由して、悪意のある者にハッキングされてしまい、人間に何らかの危害が加えられる、病院、公共交通機関、警察、消防等々の社会的インフラが麻痺してしまうなどといったことはいつか起こるだろう。
その結果、犯罪が多発する、火が消し止められないなどといった大きな損失が社会に発生してしまうことだろう。
以上のことから私は、AI 化のメリットを最大限に享受し、人間社会と共存させていくためには、 AI 化によるデメリットに対する対策を予めしっかりとやっておくことが重要だと考える。
例えば、人間の仕事を奪わないように会社に一定の雇用を義務 付けるといった政策や、AI に誤作動を起こす状況やセキュリティ・ ホールを探させ、プログラムの自己修復をさせるなどといったことができるだろう。
こういったことによりさらなる科学の進歩、より良い生活が期待でき、ひいては、人類の大きな進歩 につなげることができると考えている。
(1291文字)
授賞理由とコメント
論理構成や主張内容としては若干弱い部分も見られたものの、メリット、デメリット、結論の各部分の論理構成と、結論と根拠の構成が、参加者の中で最もバランスが良かった。
メリットとデメリット両方に同じ現象の裏表(AIが人間の仕事を代替する)を持ってくる場合は、先述通り〇〇といったメリットがある一方で~のように、表現にひと工夫があるとさらに良い。
CK(中3女子)
AI の進化と人間との関係から、これからの未来について考えてみたいと思う。
まず、AI 化が促進することによるメリットについて考えてみると、 AI を用いる事で、誰でもアイデアの量産が可能だといったことがある。
昨今においては、絵の自動生成や単語を元に物語が編み出す技術が発達しており、人間がする創作や発想の手助けになっている。
今後もその技術が研究開発されるのと同時に、人間が AIの正しい利用方法を学べば、アイデアを組み合わせ試行する地道な作業が省け、より作品の精度を高める段階に時間を費やすことができるため、芸術文化の発展に貢献するだろう。
さらに、AI の導入は人件費や経費の削減につながる。
例えば、データの計算、抽出、などの事務作業を AI に任せ、より効率化させることで、企業は浮いた分の資金を設備や広告費用、新技術の開発や他分野への投資などに充てられるようになる。
その結果、生産性が向上し、GDP が成長する。
また、AI が生活に浸透すると、人材育成の概念が変化する。今の時代、大学入試として一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜が実施されているが、 大学入試を突破する AI やチャット GPT などの登場により、暗記重視の学校教育は思考型 教育へと転換する動きを見せている。 これによって、数学力、読解力、論理力、正解のない問いに答える力などが問われる時代が来る。その結果、意欲のある後進 や AI を有効活用できる人材が育ち、人間の生活が豊かになる。
しかし、AI 化の進展には大きなデメリットも伴うだろう。
例えば、AI の利便性が高すぎることで人間の能力低下が起きるといったことだ。
人間はバーチャルアシストに依存してしまうと、 意欲や記憶力、思考力などを必要としないため、能動的に物事に取り組む力が衰える。これらの力は、学業や人との関わりの中で必要となるため、結果として、全体的な学力や人間力の低下に繋がる。
さらに、AI が普及すると雇用が減少する。 運送業や入力作業などのマニュアル化された仕事が AI によって代替されやすいのは勿論のこと、芸術作品はデータを元にコンテンツを生成する AI で出力できるため、様々な職種で失業者が増加する。その結果、経済格差や所得格差の拡大に繋がる。
また、AI は指数関数的に成長し、いずれ技術的特異点に到達する可能性がある。
例えば近年では、意識をコンピュータに移すことで不老不死を実現させようとする試みや、人間に酷似した AI ヒューマノイドロボットの開発が行われている。
このように、AI は人間に、人間は AI に近い存在に変化すると、人間の存在意義は不明瞭になったり、人間の定義が塗り替えられたりしていく。その結果、人間的世界の喪失にも繋がりかねない。
以上のメリット、デメリットから考えるに、私は、AI 化の進展は人間に多大な利益 をもたらすが、それとともに人間の存続に関わる甚大な悪影響を及ぼすと考える。
今後も AI の市場規模は拡大し続け、その存在はより身近になる可能性は非常に 高いことから、リスクが甚大であっても、後戻りすることはないだろうと思われる。
したがって、私は、AI と共存する社会を実現させるために、AI についての理解を 深め AI を管理し続けることが何よりも必要だと思う。
( 1329 文字)
授賞理由とコメント
社会、経済の行く末を予測する上で、絵の自動生成や大学入試の変化など、さまざまな分野の具体例を列挙しており、広い視野をもって未来の予測に説得力を持たせている点、他の人にはない着眼点を持っている点を評価。
数学力、読解力、論理力、正解のない問いに答える力などが問われる時代が来る結果、”自力で考える力や課題を解決する力が育ちやすくなり、未来を自ら切り開くためのマインドやスキルを身に付けた人材が増えていき”、意欲のある後進やAIを有効活用できる人材もその中から育つ。・・・とすると(” ”部分を加筆)、より論理的になる。
総括
全体的に、一年余りでここまで書けるようになったのは、素晴らしい成長だったと思います。
皆、本当によく頑張りました。
上記優秀賞受賞者だけでなく、全員に共通して見られた傾向がありましたので、下記の点につき留意しましょう。
同じ現象を表現する時には工夫を
論理の飛躍に注意する
AIとコンピュータそのものとを混同しないようにする
補足:情報漏洩自体はインターネットの普及とともに課題になっていることであり、誤作動もAIに限ったことではない。
大切なポイントは、
「人間の介在なくAIが自分で学習するような複雑な機能を持つがゆえに、ひとたび重大なトラブルが起きた際、解決が非常に困難で企業や社会に多大な影響をおよぼす恐れがあること、そうしたAIの悪用による高度で悪質な犯罪リスクの可能性があること」に留意。