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発達と生化学

【発達と生化学】腸内細菌は脳に影響?発達障害と腸の関係

「発達障害は生まれつきだから変わらない」と考えられることがあります。
しかし近年では、腸内環境と脳の働きが密接に関係する「脳腸相関」の研究が進み、腸内細菌が認知機能や行動、気分などに影響を与える可能性が数多く報告されるようになりました。

本記事では、現在までに分かってきた研究内容と子どもたちを指導する中で見てきた変化をあわせてご紹介します。
※本記事は研究報告や臨床経験をもとにした内容であり、すべての発達障害が腸内環境だけで説明できるものではありません。

腸内細菌は体を動かすさまざまな物質をつくっている

私たちの腸には、およそ100兆個ともいわれる腸内細菌が生息しています。
腸内細菌は食べ物を分解するだけではなく、その過程で短鎖脂肪酸などさまざまな物質を作り出しています。これらは腸だけで働くのではなく、免疫や代謝、神経系にも影響を与えることが分かってきました。

例えば、炎症を抑える免疫細胞の働きを調整したり、神経伝達物質の産生に関わったりするなど、人の体を正常に機能させる重要な役割を担っています。

つまり、人は自分の細胞だけで生きているのではなく、腸内細菌と共生することで健康を維持していると考えられているのです。

腸内環境は性格や運動能力にも関係する

近年の研究では、腸内細菌は脳だけでなく、性格やストレス耐性、運動能力などにも影響を与える可能性が示されています。

例えば、

アスリートの腸内細菌を移植したマウスの運動能力が向上した
肥満の人の腸内細菌を移植すると体脂肪が増えやすくなった

といった研究が報告されています。

もちろん、これらは動物実験であり、そのまま人に当てはめられるものではありません。
しかし、「腸内環境が全身の機能に影響する」という考え方を裏付ける研究は年々増えています。

発達障害と腸内細菌の関係も研究が進んでいる

発達障害、とくにASD(自閉スペクトラム症)についても、

特定の腸内細菌が作る代謝物質が行動に影響した
腸内細菌叢の違いがASD児で確認された
腸内細菌への介入で症状の改善がみられた例が報告された

など、腸内環境との関連を調べる研究が数多く行われています。

一方で、その仕組みはまだ十分には解明されておらず、腸内環境だけが原因であると結論づけられているわけではありません。

現在は「脳・腸・免疫が相互に影響し合う」という脳腸相関の考え方のもとで研究が進められています。

腸内環境は乳幼児期から大きく影響を受ける

腸内細菌叢の土台は、出生から3歳頃までに形成されると考えられています。

母親から受け継ぐ細菌や授乳、離乳食、生活環境、抗菌薬の使用など、さまざまな要因が影響します。

そのため近年では、

帝王切開の増加
抗生物質の使用
食生活の変化
過度に清潔な環境

なども腸内細菌叢の変化に関係しているのではないかと考えられています。

腸内環境を整えることで変化が見られた子どもたち

これまで多くの子どもたちを指導してきましたが、その中には、食生活や生活習慣を見直し、腸内環境の改善に取り組んだ結果、

集中力が高まった
会話がスムーズになった
記憶力が向上した
学習への意欲が出てきた
不登校から学校へ通えるようになった

など、大きな変化が見られたケースが多数あります。

特に印象に残っているのは、自閉スペクトラム症の症状が強く、過去の出来事への強いこだわりから会話が成立しなかった生徒です。

食生活の改善を継続した結果、徐々に会話の幅が広がり、記憶力や理解力も向上しました。

発達障害は原因が一つではない

発達障害の症状には、遺伝的要因、環境要因、脳の発達、睡眠、栄養状態など、多くの要素が関係しています。

そのため、「腸内環境を整えれば必ず改善する」とは言えません。

しかし近年の研究では、腸内環境が脳の働きや行動に影響を及ぼす可能性が示されており、身体の土台を整えることは決して無駄ではありません。

実際、勉強法だけでは変わらなかった子どもたちが、食生活や生活習慣を見直したことで理解力や集中力が大きく伸びた例が多々あることから、
まずは脳が本来の力を発揮できる身体の状態を整えること。
それが、学力だけでなく日々の生活にも良い影響を与える第一歩だと考えています。

参考文献
Cryan JF, O’Riordan KJ, Cowan CSM, et al. The microbiota-gut-brain axis. Physiological Reviews. 2019;99(4):1877-2013.
 (腸内細菌と脳・神経・免疫との関係をまとめた代表的な総説)
Kang DW, Adams JB, Gregory AC, et al. Microbiota Transfer Therapy alters gut ecosystem and improves gastrointestinal and autism symptoms: two-year follow-up. Scientific Reports. 2019;9:5821.
 (自閉スペクトラム症に対する腸内細菌叢移植療法の2年間追跡研究)
Ross FC, Patangia D, Grimaud G, et al. The interplay between diet and the gut microbiome: implications for health and disease. Nature Reviews Microbiology. 2024.
 (食事と腸内細菌叢が健康や疾患に与える影響についてのレビュー)
Korteniemi J, Karlsson L, Aatsinki A. Systematic Review: Autism Spectrum Disorder and the Gut Microbiota. Focus (American Psychiatric Association Publishing). 2024.
 (自閉スペクトラム症と腸内細菌叢に関するシステマティックレビュー)
Su Q, Wong OWH, Lu W, et al. Multikingdom and Functional Gut Microbiota Markers for Autism Spectrum Disorder. Nature Microbiology. 2024.
 (自閉スペクトラム症に関連する腸内細菌叢の特徴と機能についての研究)
Revealing the Gut Microbiome Mystery: A Meta-analysis Revealing Differences Between Individuals with Autism Spectrum Disorder and Neurotypical Children. BioScience Trends. 2024.
 (自閉スペクトラム症児と定型発達児の腸内細菌叢を比較したメタアナリシス)

こちらで紹介しきれない詳細を、著書『子どもの“わからない”を“わかる!”に変える「国語脳」の作り方』にまとめています。ぜひご一読ください。
本記事は、子どもの発達デザイン研究所の5,500件以上の対応実績をもとにまとめています。
「国語脳」は、生化学と教育を融合した、代表・倉澤けい提唱の教育理論です。

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