1. HOME
  2. ブログ
  3. 発達と生化学
  4. 【発達と生化学】不登校や発達に悩む子の腸内環境を整える
記事

発達と生化学

【発達と生化学】不登校や発達に悩む子の腸内環境を整える

前回の記事では、子どもの脳の働きや発達の特性が、実は「腸内環境(脳腸相関)」と深く結びついているという科学的なメカニズムをお伝えしました。

脳のパフォーマンスや情緒の安定は、腸内環境という「身体の土台」があってこそ発揮されます。

では、学校へ行く元気が湧かなかったり、学習に集中できなかったりする子どもの腸内では、一体何が起きているのでしょうか。
日々の食事や生活で何を意識すればよいのでしょうか。

今回は、子どもの本来の力を引き出すために、今すぐ実践できる「腸内細菌の育て方」と具体的な食事法を解説します。

食事の目的は腸内細菌を育てることでもある

食事の目的というと、

「身体を作るため」
「エネルギーを補給するため」

と考える方が多いと思います。
もちろん、それは大切な役割です。

しかし近年の研究では、食事は私たち自身の細胞だけでなく、腸内に存在する数多くの細菌にも影響を与えることが分かってきました。

腸内細菌は、私たちが食べたものを利用して活動し、その過程で短鎖脂肪酸など、身体に影響を与えるさまざまな物質を作り出します。
これらは、

腸の健康維持
免疫機能の調整
炎症反応のコントロール
神経系への影響

などに関わることが研究されています。

つまり、私たちの食事は「自分の身体への栄養」であると同時に、「腸内細菌を育てる環境づくり」でもあるのです。

腸内細菌の種類やバランスは心身の状態にも関係する

腸内細菌について研究が進む中で、腸内環境が、

代謝
免疫
ストレス反応
脳機能

など、全身の状態と関係している可能性が明らかになってきました。
例えば、動物研究では、

運動能力の高い個体の腸内細菌が身体能力に影響した
肥満傾向のある個体の腸内細菌が代謝に影響した

といった報告があります。

もちろん、これらは主に研究段階のものであり、人間にそのまま当てはまるわけではありません。
しかし、「腸は消化だけを担当する場所ではなく、全身の健康と関わる重要な器官である」という考え方は広がっています。

腸内環境と発達障害・不安症状などの研究

近年では、発達障害(神経発達症)、不安、うつ症状などと腸内環境との関連についても研究が進められています。
ASD(自閉スペクトラム症)のある人では、腸内細菌叢の特徴に違いが見られるという研究報告があります。

また、腸内細菌が作り出す代謝物質が、神経や免疫の働きに影響する可能性についても研究されています。

ただし現在の科学では、

「腸内環境が悪いから発達障害になる」
「腸内環境を変えれば必ず症状が改善する」

という単純なものではありません。

発達特性には、遺伝的要因、脳の発達、環境、生活習慣など、多くの要素が関係しています。
その中の一つとして、身体の土台を整えることが重要だと考えられています。

腸内環境を整えるために意識したいこと

①腸内細菌の多様性を大切にする

以前は、

「善玉菌を増やす」
「悪玉菌を減らす」

という考え方が一般的でした。
しかし現在では、単純に一種類の菌だけを増やせばよいわけではなく、多様な腸内細菌がバランスよく存在することが重要だと考えられています。

そのためには、さまざまな食品から多様な栄養を摂ることが大切です。

②食物繊維を意識して摂る

腸内細菌にとって、食物繊維は重要な栄養源になります。
食物繊維を利用した腸内細菌は、短鎖脂肪酸など身体に有用な物質を作り出します。

おすすめの食品としては、

野菜
海藻
きのこ類
豆類
雑穀

などがあります。

野菜が苦手なら「冷やご飯」を活用

もしお子さまが野菜やきのこ類が苦手でも大丈夫。
実は、冷えたご飯には食物繊維とまったく同じ働きをする力があることが分かっています。

ご飯が冷める過程で「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」という成分に変化し、これが消化されずに大腸まで届いて腸内細菌の極上のエサになります。

冷たいまま食べる「おにぎり」や「お寿司」は、お腹の菌を育てるための日本人の素晴らしい知恵なのです。

③加工食品や糖質の摂りすぎを見直す

糖質そのものは身体に必要な栄養素です。
ただし、砂糖を多く含む食品や加工食品を頻繁に摂取する食生活では、腸内環境のバランスが乱れる可能性があります。

特に、

甘い飲料
菓子類
加工食品
精製された食品

などが多い場合は、食生活全体を見直してみる価値があります。
大切なのは「完全に禁止すること」ではなく、日常的な摂取量を適切にすることです。

④発酵食品を取り入れる

味噌、納豆、漬物などの発酵食品には、さまざまな微生物が関わっています。

また、発酵食品は食物繊維や植物由来成分と組み合わせることで、腸内環境を支える食事になります。

ただし、乳製品を含む発酵食品などは体質によって合う・合わないがあります。
味噌、納豆も人によっては合わない場合もありますので、自分や子どもの身体の状態を見ながら取り入れることが大切です。

⑤過度な除菌を避ける

清潔な環境は健康維持に必要です。
一方で、日常生活に存在する多様な微生物との関わりも、人間の免疫システムにとって重要だと考えられています。

必要な衛生管理を行いながら、過剰な除菌を習慣化しないことも大切です。

腸内環境を整えることは子どもの可能性を支える土台

腸内環境は、発達特性や学習能力を決める唯一の要素ではありません。
しかし、

食事から摂取する栄養
睡眠
生活リズム
ストレス耐性

などと密接に関係する腸内環境を整えることは、子どもが本来持っている力を発揮しやすくするために最重要です。

勉強方法を変えてもなかなか成果が出ない時、まず身体の状態を見直してみる。

それも、子どもの成長を支える一つの方法です。

参考文献
Cryan JF, O’Riordan KJ, Cowan CSM, et al. The microbiota-gut-brain axis. Physiological Reviews. 2019;99(4):1877-2013.
(腸内細菌と脳・神経・免疫との関係をまとめた代表的な総説)

Ross FC, Patangia D, Grimaud G, et al. The interplay between diet and the gut microbiome: implications for health and disease. Nature Reviews Microbiology. 2024.
(食事と腸内細菌叢が健康や疾患に与える影響についてのレビュー)

こちらで紹介しきれない詳細を、著書『子どもの“わからない”を“わかる!”に変える「国語脳」の作り方』にまとめています。ぜひご一読ください。

関連記事